鉄道技術研究
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電車の制御方式

入力電源
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鉄道技術研究写真 鉄道技術研究写真 電車を動かす電気は、電力会社の発電所で交流22,000Vの電力が作られ、特別高圧送電線を通って鉄道会社の変電所に届きます。ここで直流1,500Vに変換して架線に電力を供給します。電車は集電装置から直流1,500Vを受電し、各種制御装置で必要な電圧を作り出して主電動機(モーター)を回転させ走行します。そして既定の速度に達成すると走行電力消費を打ち切り、惰行のみで走行を続けます。
JR東日本E231系・ワンマスコンハンドル 都営地下鉄6300形・架線入力電圧計
惰行からの減速時に「制動力を発電」して「電気を架線に戻す」回生ブレーキも今や主流になりました。この「電気を架線に戻す」とは、回生ブレーキ使用時に同一線区で力行している他の電車の走行電力消費を補助する事です。大容量の電気を蓄える事が出来ませんので、同一変電所の消費電力を軽減する省エネシステムと言えます。受電した電力を制御する方法として、抵抗制御・電機子チョッパ制御・VVVFインバータ制御などがあり、動力源の主電動機には、直流複巻整流子電動機・かご形三相交流誘導電動機・永久磁石同期電動機などがあり其々特性が違います。
※写真2の運転室にある電圧計は、右側が架線電圧の直流1,500Vを指してます。左側は車内サービス用電源100V+です。
力行とは、マスコン(左写真1赤丸)のノッチを入れて主電動機に必要な電圧を流し列車の起動又は加速をする事です。
※新幹線・常磐線(取手駅似北)・つくばエクスプレス(守谷駅似北)は交流電源です。
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抵抗制御
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電車の動力である主電動機は、界磁(固定子)および電機子(回転子)に流れる電圧の値に比例して回転数が変化します。供給電源が直流の場合は、架線側をプラス、線路側をマイナスとしてその間に抵抗器を入れる事で動力を制御します。右の写真は西武2000系2011F編成の抵抗装置です。この車両の抵抗制御装置は、界磁チョッパ制御装置に付随しているものですが、抵抗制御・直並列組合せ制御で起動・力行を行います。 これは抵抗制御による起動と力行はそのままにして、回生ブレーキ(下記参照)を実現する方法です。 鉄道技術研究写真
抵抗装置(西武2000系)
鉄道技術研究写真 鉄道技術研究写真 抵抗制御は、抵抗装置を使って主電動機の制御を行う事を言いますが、主電動機と抵抗を合わせて直列と並列に切り替えながら制御を行う方式を直並列制御と言います。
起動時の衝撃を緩和する目的で考案された方法ですが、切り替えるリレーの音が特徴です。
実際は起動時に直列に電動機を接続し、30km/hほどになると並列に電動機を接続する制御法です。
小田急5200形抵抗制御車 京急1000形抵抗制御車
鉄道技術研究写真 なめらかに速度を上げていく目的で様々な方法が考案されました。主幹制御器の1ノッチの中には、7段程度の抵抗器制御段があり、様々な値の固定抵抗器を組み合わせる事で電圧を制御する訳ですが、これを適切に組み合わせる機構が電動カム軸です。構造は、突起がついた円盤状のものを一つの軸に組み合わせ、その軸を回転させて抵抗値を変段します。電動カム軸を使った方式の中で、更に滑らかな動きを求められました。列車が加速中に、電動カム軸式主制御機の制御段数が進段する過程でそれぞれの制御段の間に「バーニア抵抗」と呼ばれる抵抗を入れてます。実質的に制御段を増加させ、加速と減速が滑らかになる様に改造した方式をバーニア抵抗制御と言います。発電ブレーキ装備車両は、減速中にも効果があります。
電動カム軸装置
鉄道技術研究写真 鉄道技術研究写真 バーニア抵抗制御は、現役で運用される小田急電鉄5000形や東武鉄道200系・300系・1800系・6050系・8000系などで採用してます。この様に抵抗制御装置は、長年使われて来た手法なので多彩なバリエーションがありますが、共通する事は、切り替わりに多少の時間を要する事と電力を無駄に消費してしまう事に問題が残り、次世代への課題となりました。
小田急電鉄5000形 東武鉄道8000系
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電機子チョッパ制御
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鉄道技術研究写真 電機子チョッパ制御は、抵抗制御に次ぐ直流電動機の制御を行う方式です。これはチョッパ回路をモータの電機子回路に接続して電圧制御を行うものです。電機子チョッパ制御の基本的な考え方は、サイリスタ(高速で入り切りの出来るスイッチ)を使って電気を必要な分だけ切り取り、その平均電圧で制御します。この方法は、 ステップのない無段階制御が可能になり、スムーズな起動と粘着性能を向上させる事が出来ます。
電機子チョッパ制御方式は、1968年に東京地下鉄6000系で初めて採用されました。
東京地下鉄6000系
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鉄道技術研究写真 この制御方法は、中速域から低速域までの領域で安定した回生ブレーキが使用可能になり、エネルギー消費量を減少出来るほか、ブレーキ抵抗器を搭載しないで済む為に車体の軽量化が実現出来ました。当時としては革新技術の集大成でした。その後、電機子チョッパ制御は、製造コストが高いという欠点から界磁チョッパ制御方式に一部電鉄車両がシフトします。これは抵抗制御による起動と力行はそのままに、安価に回生ブレーキを実現するために開発され、1969年に東急電鉄8000系で初採用されました。
この車両では初めてワンハンドルの主幹制御器(マスコン)が装備されました。
東急電鉄8000系
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鉄道技術研究写真 ■界磁添加励磁制御
界磁添加励磁制御は、抵抗制御の直流直巻電動機を利用しつつ、補助電源(MG)を利用して界磁調整を可能にしました。主回路は抵抗制御のままなので打ち切り速度は15〜30km/h程度と高いですが、回生失効は起きにくいのが特徴です。1985年にJR東日本山手線で新規投入された205系は、CS57形界磁添加励磁制御装置を採用した抵抗制御・直並列組合せの車両です。2005年に運行離脱後は、埼京線(左写真)・横浜線・南武線・京葉線・武蔵野線などに転属して今なお現役です。
JR東日本205系
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鉄道技術研究写真 ■界磁チョッパ制御
界磁チョッパ制御は、抵抗制御・直並列組合せ制御で起動・力行を行い、界磁回路のみをチョッパ制御として逆起電力の大きさで速度制御を行うものです。主回路は抵抗制御のままなので打ち切り速度は、20〜40km/h程度と高いのが特徴です。減速時は界磁を強め電機子の逆起電力を大きくして回生制動を行います。JR各社では採用されませんでしたが、界磁調整器をチョッパ方式に置き換える形で東急電鉄8000形に初めて採用され、京成電鉄AE形(初代)でも採用された方式です。
界磁チョッパ制御装置
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■サイリスタ位相制御
サイリスタ位相制御は、交流電化区間で用いられる方法です。交流電力波形の一部を取り出し位相制御を行う事で、電圧制御後に整流して直流直巻電動機を駆動させる方式です。
回生時はサイリスタをインバータとして用いて電動機から発生した直流電力を交流に変換します。電源が交流である必要がある為に交流専用車両で使われます。サイリスタ位相制御を用いて回生ブレーキを搭載する車両は、1984年に登場したJR九州713系・783系等です。
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VVVFインバータ制御(Variable Voltage Variable Frequency)
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鉄道技術研究写真 今までの抵抗制御は、熱による電力の無駄がありました。
VVVFインバータ制御は、熱源となる抵抗器を必要としません。インバータ装置は架線電圧の直流1,500Vから交流電力を出力する電力変換装置の事で、出力交流電力の実効電圧と周波数を任意に制御する事が可能です。この制御方法は、現在主流の制御装置です。可変電圧可変周波数制御は、架線の直流電力を正弦波の波の高さに応じた幅のパルスで刻み、サイリスタやトランジスタといったスイッチング素子6個からなるブリッジ回路を用いて電流のON/OFFを繰り返し、パルス幅を変動させる事で疑似的に三相交流を作り出して三相交流誘導電動機を駆動する事を実現します。
小田急60000形(MSE)VVVFインバータ装置
またスイッチング速度が速い絶縁ゲート型両極性トランジスタ IGBTの採用により、より正弦波に近い出力が得られ、インバータ装置や電動機の低騒音化も実現しました。なおVVVFとは可変電圧可変周波数制御の英語略です。
鉄道技術研究写真 鉄道技術研究写真 左の写真はJR東日本233系・小田急4000形のVVVFインバータ制御車ですが、主制御装置は三菱電機製のIGBT素子によるIPM2レベル方式のVVVFインバータ制御で、回生ブレーキ及び純電気ブレーキ機能を保有します。1基のインバータ・コントロール(IC)で4個のかご形三相交流誘導電動機(M)を制御するIC4M方式2群を1ユニットとして構成されます。
JR東日本233系 小田急4000形
鉄道技術研究写真
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上の写真は、日立製GTOサイリスタ素子によるVVVFインバータ制御装置を搭載した京王電鉄8000系です。京王電鉄で初めてVVVFインバータ制御方式を採用した車両です。
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主幹制御器(マスターコントロール=マスコン)

鉄道技術研究写真 鉄道技術研究写真 電車の運転を操作する主幹制御器はマスコンと呼ばれます。垂直マスコン(左写真)とワンハンドルマスコン(右写真)に大別され、垂直マスコンは、レバーを横方向に旋回して「力行惰行」を操作するタイプです。ブレーキハンドルは右側にあり、ハンドルは非常ブレーキ位置で抜ける着脱式です。ワンハンドルマスコンは「力行惰行制動」を一つのハンドルで縦軸に操作するタイプです。
小田急8000形(未更新) 小田急8000形(更新型)
一世代前の垂直マスコンは、マスコンとブレーキの操作を合わせる事で細かい走行制御をする事が可能です。この方式は、運転士の技量に依るところが多く、起動時の衝撃を抑制する時にその技量を体感する事が出来ます。その意味でワンハンドルマスコンの方は「細やかな制御が難しい」という理由で好まない乗務員が多数いるそうです。
惰行はノッチオフにした状態の事です。
※上左写真赤丸はブレーキハンドルが外された状態です。
鉄道技術研究写真 縦軸マスコンを実用化したのが、東海道新幹線0系です。 マスコン操作は「押して力行・手前に引いて惰行」と現在使われているものと逆方向でした。ブレーキハンドルは左側に位置し、従来の横方向に旋回させるタイプです。これは長年に渡って自動空気ブレーキを採用し、運転台のブレーキレバーを直接操作した国鉄乗務員の慣習から自動進段電気指令式ブレーキになってからも配置が続けられたそうです。在来線では205系・211系等で踏襲しましたが、国鉄型縦軸マスコンは私鉄型とは逆の配置でした。
※左写真赤丸はブレーキハンドルが外された状態です。
東海道新幹線0系
現在主流のワンハンドルマスコンは、1969年に東急8000系電車で初の本格的採用になりました。このタイプの登場から「押して制動非常・中間が惰行・手前に引いて力行」に全国の鉄道で統一されました。
鉄道技術研究写真 ワンハンドルマスコンを搭載するには、マスコン側で操作される発電・回生ブレーキとブレーキ弁で操作される空気ブレーキ系が、電気的・機械的に同期する必要があり、新造車両では問題ありませんが、既存車を更新する場合は必要条件になります。左写真の両手式ワンハンドルマスコンは、操作時に両手を使います。ハンドルから両手が離れるとデッドマン装置が作動し、持続すると安全の為に列車は停止します。両手式は、東急電鉄・京王電鉄・東京地下鉄・東京都交通局・西武鉄道・東武鉄道・京浜急行電鉄・京成電鉄・つくばエクスプレスなどの新造車両又は更新車両で採用されてます。
京王井の頭線1000系
鉄道技術研究写真 左写真の片手式ワンハンドルマスコンは、JR東日本・小田急電鉄・相模鉄道などの新造車両又は更新車両で採用されてます。片手側だけのハンドルは、運転台の左側に寄せる事で中央部にスペースが確保され、各種スイッチや仕業表等を配置する事が可能となりました。右側にあるT型握りハンドルは、走行中の態勢バランスを保つ様に取付られてます。片手式に装備されるEB装置は、一定時間(約1分)以上の運転操作をしないと警報ブザーが鳴動すると共に警報ランプが点灯し、非常ブレーキが作動します。
※写真のマスコンハンドルの位置は、レバーを最大ノッチに押した=非常ブレーキ状態です。
JR東日本E231系
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制動装置

回生ブレーキ
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鉄道技術研究写真 電動機(モーター)を発電機として作動させ、発電時の回転抵抗制動を電気ブレーキを言います。車両から架線に電気を戻すものを回生ブレーキと呼び、車両内で抵抗器等により熱エネルギーに変換して捨てるタイプを発電ブレーキまたは電気ブレーキと呼びます。回生ブレーキの条件は、車両側の電圧が架線側より高い事です。高くなければ十分な電力回生が出来ません。電力回生が出来ないとブレーキ性能が低下する回生失効現象が発生します。これを避ける為に、速度が落ちると回生ブレーキから発電ブレーキに切り替えて併用とする事が多い様です。
ブレーキシュー
JR東日本E257系・JR東海313系等に装備されるブレーキチョッパ装置は、回生ブレーキを使いながら架線に回生出来ない余分な電力を発電ブレーキで消費させる事が出来ます。
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電気指令式ブレーキ
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鉄道車両のブレーキは自動空気ブレーキが永年使われていましたが、運転台にあるブレーキ制御弁からの指令を空気圧で各車のブレーキ制御をする為に、列車の長編成化や高速化の要請にレスポンスが問題となりました。 1950年代以降、この問題を解決する為に応答性の良い電磁弁を併用する電磁自動空気ブレーキが開発されました。
電磁直通ブレーキは、電磁弁を作動するためのジャンパ線の他、指令を送る直通管、圧縮空気を各車両に送る元空気だめ管、非常時のバックアップを行う自動空気ブレーキ管、この3本の空気管を引き通すが必要でした。これを進化させたものが電気指令式ブレーキで、運転台から電気指令のみで各車に搭載された直通空気ブレーキを制御する方式です。
電気指令式ブレーキは、元空気だめ管1本または元空気だめ管に自動空気ブレーキ管あるいは非常管を合わせた2本を引き通す事になります。この構造は空気配管を運転室に引き込む必要がないので、主幹制御器と一体化する事が出来てワンハンドルマスコン導入が可能となりました。近年のタイプは、デジタル化(演算装置化)により、きめ細かい制御が可能な電子制御方式を採用してます。但し非常ブレーキとして電気指令式ブレーキとは別に「非常管+非常弁」による自動空気ブレーキをバイパスで備えます。また電気式ブレーキを採用し、機構の異なる電磁直通ブレーキ車両との連結に対応したブレーキ読替装置を搭載する車両は、小田急電鉄3000形・8000形(更新車)です。
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遅れ込め制御
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遅れ込め制御は、車両毎の重量・ブレーキ性能の違いに応じたブレーキ力を各車両に指示する方式を言います。各車両でブレーキ動作を均一にするには、電気指令や電空協調制御で行いますが、一般的な電空協調制御でも「電気ブレーキ力と空気ブレーキ力との合成力」を列車編成単位で均一にする事が必要です。電車の編成は、主電動機を備えた電動車と備えていない付随車があり、電気ブレーキを使う事が出来るのは電動車だけです。電動車の電気ブレーキを優先させ、ブレーキ力を均一にする為に開発されたのが遅れ込め制御です。
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